皮膚の膿瘍(おでき)の原因:自分で絞っても治らない理由、切開排膿が必要な場合と抗菌薬で足りる場合を皮膚科医が解説
膿瘍(Abscess、skin abscess)とは、皮膚の中や皮下に細菌が感染してできる膿のかたまりで、赤く腫れて熱をもち、痛みを伴います。よく見られるのは毛穴から生じる単発の膿瘍(furuncle、boil)です。小さな膿瘍は破れて1〜3週間で自然に治ることもあります。一方、1〜2cm以上のやわらかいしこりは、薬だけでは膿の溜まった袋の中まで届きにくいため、多くの場合は医師による切開排膿が必要です。膿瘍ができる場所を問わず、自分で絞ったり針で刺したりしないでください。
患者さんが「おでき」と呼ぶしこりには、治療が異なる複数の種類が含まれます。炎症を起こした嚢腫(のうしゅ)のこともあれば、慢性の汗腺の炎症の病気のこともあります。この記事では、膿瘍を種類と部位で分けて、芯のない膿瘍とは何か、破れた時にどうするか、切開排膿はどのように行うか、どんな薬を使うか、何日で治るかを説明します。
膿瘍はどのように見えますか
膿瘍を疑う共通の特徴は次のとおりです。
硬くて赤く痛いしこりから始まります。最初の1〜3日はしこりが硬く、押すと痛みますが、まだ膿は見えません。
中心から徐々にやわらかくなります。膿が袋状に溜まると、押した時に中に水が入っているような感触があります。医師はこれを波動(fluctuation)と呼びます。
熱をもち、ズキズキ痛みます。袋の中の圧力が高まるため、膿が排出されるまで痛みは強くなっていきます。
膿の芯(白い点)がある場合とない場合があります。浅い膿瘍では中心に白黄色の膿の点が見えることが多く、深い膿瘍では芯がまったく見えないこともあります。
大きさはさまざまです。1cm未満のものから数センチのものまであります。
毛が生えていて摩擦のある部位に多く見られます。顔、首、わき、お尻、太もも、脚の付け根などです。
膿瘍の原因
膿瘍の多くは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によるもので、MRSAと呼ばれる耐性菌も含まれます。この菌は多くの人の皮膚や鼻の中にいて、普段は病気を起こしません。一般の人の約20〜30%が鼻に保菌しているとされます。菌が毛穴、傷、詰まった腺から皮膚に入り込むと、体は白血球を送り込んで周囲を取り囲み、壁をつくります。膿とは、白血球、菌、死んだ組織が混ざったものです。
膿瘍ができやすくなる要因は次のとおりです。
毛包炎(もうほうえん)や埋没毛が深く進行したもの
ムダ毛の剃毛や毛抜き、きつい服による摩擦、関節の曲がる部分の汗
ニキビや傷をいじること、もともと皮膚炎のある肌をかくこと
糖尿病、免疫力の低下、免疫抑制薬の使用、肥満
膿瘍のある人や保菌者とタオルやカミソリを共用すること
単発の膿瘍(Furuncle):毛穴から生じるしこり
特徴:毛穴を中心とした直径1〜2cmほどの赤く痛いしこりで、膿の芯は通常1つです。首、顔、わき、お尻、太ももによく見られます。
原因:Staphylococcus aureus が毛穴から周囲の組織へ広がります。直径5mm未満の浅い小さな盛り上がりである通常の毛包炎より深い状態です。
重症度と緊急性:健康な人ではほとんど危険はありません。小さなしこりは破れて1〜3週間で自然に治ることもありますが、その間はかなり痛みます。
受診の目安:1〜2cm以上のやわらかいしこり、温めて3〜5日たっても良くならない、痛みで眠れない、または後述の危険なサインがある場合です。
蜂巣状の大きな膿瘍(Carbuncle):芯が複数ある大きなしこり
特徴:複数の毛穴がつながって、膿の芯が複数ある大きなしこりになります。首や背中によく見られます。
原因:単発の膿瘍と同じ種類の感染ですが、より広範囲に広がります。糖尿病のある人に多く見られます。
重症度と緊急性:単発の膿瘍より重く、発熱やだるさを伴うことが多くあります。
受診の目安:必ず医師の診察を受けてください。詳しい内容と治療は記事カーバンクル(蜂巣状の膿瘍):絞ってはいけない理由と安全な切開排膿をご覧ください。
芯のない膿瘍:膿がまだ見えない痛いしこり
特徴:硬い、または弾力のある赤く痛いしこりですが、膿の点は見えません。表面がつっぱって光ることもあります。多くの人が芯が出てくるのを何日も待ってしまいます。
原因:いくつかのパターンがあります。1つ目は、膿がまだ集まっていない初期の膿瘍です。2つ目は、膿が皮膚の奥にあって芯として出てこない深い膿瘍です。3つ目は、見た目が似た別のしこりで、炎症を起こした嚢腫、慢性の汗腺の炎症(化膿性汗腺炎)、わき、脚の付け根、首のリンパ節炎などがあります。
重症度と緊急性:芯がないからといって軽いとは限りません。深い膿瘍では、見た目より多くの膿が溜まっていることがあります。針で自分で膿を探すと、感染が広がるだけでなく、下の組織を傷つけるおそれがあります。
受診の目安:温めても3〜5日でしこりが小さくならない、しこりが急に大きくなる、または発熱がある場合です。医師は触診を行い、必要に応じて超音波検査で膿の溜まった袋があるかを確認します。これが切開排膿の要否を決める判断材料になります。痛みがなくゆっくり大きくなる硬いしこりは膿瘍とは別のものですので、同じく医師に診てもらってください。
顔の膿瘍:顔の中央の三角形は絞らないでください
特徴:鼻、上唇、ほうれい線、目の周りに痛いしこりができます。顔の皮膚は血流が豊富なため、しこりの大きさのわりに大きく腫れることがあります。
原因:鼻の中の毛包炎、鼻をほじること、ニキビを絞ることから始まることが多くあります。
重症度と緊急性:口角から鼻の付け根までの範囲は「危険三角」と呼ばれます。この部分の静脈は眼窩の奥の静脈洞につながっており、絞ると菌が入り込むおそれがあります。この静脈洞に感染性の血栓ができる海綿静脈洞血栓症(cavernous sinus thrombosis)は、非常にまれですが命に関わります。
受診の目安:顔の中央や目の周りの膿瘍は24時間以内に受診してください。まぶたが腫れて開かない、目の痛み、物が二重に見える、激しい頭痛、高熱がある場合はすぐに救急外来を受診してください。顔の膿瘍では抗菌薬を併用することが多く、医師は部位に合わせて切開排膿を検討します。
わき、脚の付け根、胸の下の膿瘍:化膿性汗腺炎(HS)との区別が必要です
特徴:皮膚のしわの部分に痛いしこりができます。1回きりで完全に治るなら、通常の膿瘍であることが多いです。同じ場所に繰り返しできる、穴やトンネルでつながっている、膿が慢性的に出る、太い筋状の瘢痕(はんこん)が残るといった場合は、化膿性汗腺炎(Hidradenitis suppurativa、HS)を疑います。
原因:通常の膿瘍は毛穴の感染によるものです。一方、HSは毛穴の詰まりと慢性の炎症から始まり、菌は問題の一部にすぎません。そのため、その都度膿を出すだけでは止まりません。
重症度と緊急性:1回の膿瘍は治療すれば終わります。HSは慢性の病気で、放置すると皮下にトンネルができ、ひきつれた瘢痕が残ります。疑う目安は、いつもの同じ場所に6か月で2回以上繰り返すことです。
受診の目安:わき、脚の付け根、胸の下に繰り返しできる場合は、診断の確認と長期的な治療計画のために皮膚科を受診してください。詳しくは化膿性汗腺炎(HS)をご覧ください。授乳中の乳房の痛いしこりや、性感染症のリスクがあった後の脚の付け根のしこりは、治療が異なるため早めに受診してください。
お尻と肛門周囲の膿瘍
特徴:お尻の頬の部分のしこりは通常の毛穴の膿瘍であることが多いですが、肛門のすぐそばにあってズキズキ痛み、座る時や排便時に痛むものは、肛門周囲膿瘍(perianal abscess)の可能性があります。お尻の割れ目の上のほうにあるしこりは、毛巣膿瘍(pilonidal abscess)の可能性があります。
原因:肛門周囲膿瘍は、多くの場合、肛門の内側の腺の感染から始まり、皮膚から始まるものではありません。毛巣膿瘍は、お尻の割れ目に毛が入り込むことで起こります。
重症度と緊急性:肛門周囲膿瘍は温めるだけでは治りません。放置すると広がったり、肛門に瘻孔(ろうこう)ができたりすることがあります。会陰部に急速に広がる感染は救急の状態で、特に糖尿病のある人は注意が必要です。
受診の目安:肛門のすぐそばのしこりは24時間以内に受診してください。多くの場合、外科医による排膿が必要です。その部分の皮膚が暗い紫色に変わる、または発熱を伴う激しい痛みがある場合は、すぐに救急外来を受診してください。
炎症を起こした嚢腫(「おでき」と呼ばれるもの)
特徴:以前から痛みなく皮下にあった丸いしこりが、突然腫れて赤く痛み、膿瘍のようになります。中心に小さな黒っぽい穴が見えることが多く、出てくるものは臭いがあり、灰白色の脂肪のような質感です。
原因:表皮嚢腫(epidermoid cyst)の袋が皮下で破れたり漏れたりして、袋の中の物質に対して体が炎症を起こします。多くの場合、主な原因は菌ではないため、抗菌薬はあまり効果がありません。
重症度と緊急性:危険ではありませんが、嚢腫の壁が残っていると同じ場所に再発します。膿を出すと痛みは和らぎますが、嚢腫そのものは取り除けません。
受診の目安:しこりが炎症を起こして痛む時です。医師は排膿したり、しこりに炎症を抑える薬を注射したりしたうえで、炎症が落ち着いてから嚢腫を袋ごと取り除く手術を予約します。通常は4〜6週間ほど待ちます。これらのしこりの見分け方は皮下の脂肪のしこりと嚢腫をご覧ください。
子どもの膿瘍
特徴:大人と同じように赤く痛いしこりができ、お尻、おむつの部分、脚、頭皮によく見られます。小さな子どもは症状を伝えられないため、ぐずる、その部分を触らせないといった様子で表れることがあります。
原因:かき傷や小さな傷(おむつかぶれ、虫刺され、アトピー性皮膚炎の湿疹など)から菌が入り、家庭や学校で接触やタオルを通じてうつります。
重症度と緊急性:生後3か月未満の乳児は、免疫がまだ十分でなく症状もはっきりしないことがあるため、高リスクとされます。子どもの薬は体重で計算し、大人に使う薬の一部は子どもには適しません。
受診の目安:生後3か月未満でしこりがある、または38°C以上の発熱がある場合は、その日のうちに受診してください。年長の子どもは、しこりが急に大きくなる、発熱がある、ぐったりしている、繰り返す場合に受診してください。生後1年のころから膿瘍を繰り返している子どもは、免疫の評価を受けるとよいでしょう。
糖尿病のある人の膿瘍
特徴:一般的な膿瘍と似た見た目ですが、末梢神経が傷んでいると、本来より痛みが軽いことがあります。足の膿瘍は気づかないまま大きく腫れることがあります。
原因:血糖が高いと白血球の働きが低下し、血流が悪いと傷の治りが遅くなります。検査を受けたことのない人に膿瘍が繰り返しできる場合は、糖尿病の最初の手がかりになることがあります。
重症度と緊急性:一般の人よりリスクが高く、感染が急速に広がり、血流に入るおそれがあります。足の膿瘍や会陰部の膿瘍は特に注意が必要です。
受診の目安:膿瘍ができたら毎回24時間以内に受診し、自宅で様子を見ないでください。医師は通常、血糖値とHbA1cも検査し、血糖コントロールも治療の一部になります。足先の感覚が鈍い場合は、温湿布でのやけどに注意してください。
膿瘍を繰り返す原因
特徴:1年に2〜3回以上膿瘍ができます。別の場所にできることもあれば、家族にも同じ症状が出ることもあります。
原因:医師が調べる原因は次のとおりです。
菌の保菌者:鼻、わき、脚の付け根に Staphylococcus aureus がいて、それが自分の皮膚に戻って感染します。
耐性菌MRSA:以前使った薬が効かない場合があるため、膿の細菌培養をおすすめします。
もともと膿瘍ではない:HS、袋が残っている嚢腫、お尻の毛巣のうしゅなどです。
排膿が不十分、または異物が残っている:毛の断片、とげ、木片などです。
持病:糖尿病、免疫力の低下、免疫抑制薬、腎不全、まれな白血球の異常などです。
習慣や環境:繰り返しの剃毛、きつい服、タオルの共用、家族が保菌者であることなどです。
重症度と緊急性:発熱がなくしこりが広がっていなければ緊急ではありませんが、原因を調べずにその都度治療するのはおすすめできません。
受診の目安:2〜3回目になった時に、しこりがあるうちに受診してください。膿から細菌培養ができます。医師は菌を減らす処置(decolonization)を検討することがあります。具体的には、ムピロシン(mupirocin)2%軟膏を鼻の穴に1日2回、5日間塗り、あわせてクロルヘキシジン(chlorhexidine)2〜4%で1日1回、5〜14日間入浴します。目や耳に入らないようにし、タオルと寝具は別に洗います。この方法で再発が減る人もいますが、特に家族が保菌者のままだと菌が戻ってくることがあります。
膿瘍と炎症性ニキビ、毛包炎、蜂窩織炎との違い
腫れて痛い皮膚の病変にはいろいろあり、正しく見分けることで的確な治療を選べます。
深い結節性のニキビ(nodulocystic acne):顔、胸、背中の複数の場所にでき、ほかのタイプのニキビも一緒に見られます。治療はニキビの薬が中心で、排膿ではありません。
毛包炎(folliculitis):毛穴に沿って小さな盛り上がりが多数でき、直径5mm未満です。膿瘍より浅く、深い膿の袋はありません。
蜂窩織炎(cellulitis):赤く熱をもった発疹が広い範囲に広がり、境界がはっきりせず、排膿できる膿のかたまりはありません。治療は抗菌薬で、詳しくは蜂窩織炎(Cellulitis)をご覧ください。膿瘍と同時に起こることもあります。
炎症を起こした嚢腫:もともとしこりがあり、中心に穴が見えることが多くあります。
リンパ節炎(lymphadenitis):首、わき、脚の付け根の丸いしこりで、ほかの部位の感染が先行していることが多くあります。
膿瘍を自分で絞ったり刺したりしてはいけない理由
絞ると膿が少し出て一時的に楽になったように感じますが、いくつかの欠点があります。
膿瘍には壁があり、複数の部屋に分かれていることもあります。外から絞っても膿を出し切れず、残った膿がまた溜まります。
絞る圧力で、菌が周囲の組織や血流に押し込まれるおそれがあります。
手や針が清潔でないため、再感染や瘢痕が増えます。
顔の中央の膿瘍には、前述の特有のリスクがあります。
同じ理由で、早く破らせようと針、メス、鋭いもの、民間薬の貼り薬を使うのもおすすめできません。
自宅でできる現実的な対処
自宅でのケアは、1cm未満の小さな膿瘍で、危険なサインがなく、顔の中央にないものが対象です。
手を洗い、清潔な布をぬるま湯で湿らせて、1回10〜15分、1日3〜4回温めます。熱は血流を増やし、膿がまとまるのを助けます。
その部分を1日1〜2回、清潔な水と石けんで洗い、清潔な布でやさしく拭きます。
膿がにじむ場合や擦れる場合はガーゼで覆います。
痛い時はパラセタモール(paracetamol)500〜1,000mgを4〜6時間おきに、症状のある時に使います。1日4,000mgを超えないでください。肝臓の病気がある人や、普段から飲酒する人は、事前に医師に相談してください。
タオルは別にし、膿瘍に触れた布は洗濯して、触れた後は毎回手を洗います。
抗菌薬を自己判断で買って飲むのはおすすめできません。菌に合わない可能性があり、すでにできている膿の袋には効かず、耐性菌の原因にもなるためです。塗り薬の抗菌薬も膿の袋の中までは届きません。3〜5日ケアしてもしこりが小さくならない、または痛みや腫れが強くなる場合は、受診してください。
膿瘍が破れた時の対処
膿瘍が自然に破れると、袋の中の圧力がなくなるため、多くの場合すぐに痛みが和らぎます。大切なのは、膿を清潔に流れ出させることで、全部絞り出す必要はありません。
手を洗い、その部分を清潔な水とやさしい石けん、または生理食塩水(normal saline)で洗います。
流れ出た膿を清潔なガーゼでそっと押さえて拭き取ります。穴の中を絞ったりほじったりしないでください。
清潔なガーゼで覆い、1日2〜3回、または濡れた時に交換します。
残った膿を出すため、新しい清潔な布で温める処置を続けて構いません。
アルコールや過酸化水素水(ハイドロジェンパーオキサイド)で繰り返し洗う必要はありません。修復中の組織を刺激するためです。歯磨き粉やハーブを傷に塗るのもおすすめできません。
破れて2〜3日たっても膿がたくさん出る、しこりがまだ硬い、赤みが広がる、発熱がある、または顔の中央の膿瘍の場合は受診してください。破れたからといって膿が出切ったとは限らず、袋が残っている人もいます。医師が開いてきれいに洗います。
切開排膿はどのように行いますか
切開排膿(incision and drainage)は、膿の袋がある膿瘍の主な治療です。多くは短時間の処置で、入院せずに行えます。一般的な手順は次のとおりです。
事前の診察:膿の袋を触って確認します。しこりが深い場合や判断に迷う場合は、超音波検査を行うことがあります。
消毒と局所麻酔:しこりの周りにリドカイン(lidocaine)の局所麻酔を注射します。炎症を起こした組織では麻酔が十分に効かないことがあり、多少痛みを感じる場合があります。医師に伝えれば麻酔を追加できます。
小さく切開:膿が皮膚に最も近い部分の上で、皮膚の線に沿って切り、膿が出るようにします。
排膿と洗浄:袋の中の仕切りをほぐして膿を出し切り、生理食塩水で洗います。
適応がある場合は膿の培養検査:たとえば再発する場合、薬が効かない場合、免疫力が低い場合などです。結果は約2〜3日で出ます。
その後の傷のケア:通常は縫合せず、傷を内側から治します。大きな袋にはガーゼやドレーン(排液管)を入れることがあります。
全体で通常15〜30分ほどかかります。処置後、痛みは24〜48時間以内にはっきり和らぐことが多く、医師は通常1〜2日以内に傷の確認を予約します。それまでの間は、指示どおりに傷の手当てをしてください。肛門周囲、手、乳房、非常に深い膿瘍など、部位によっては外科医へ紹介することがあります。治療結果を最も左右するのは、膿を出し切れたかどうかで、袋が残っているといつでも戻ってきます。
膿瘍の抗菌薬:使う時期と薬の種類
健康な人の小さな膿瘍で排膿がうまくいっている場合は、薬が不要なこともあります。合併症のない膿瘍での大規模な研究では、排膿後に薬を使うと治癒率が約70〜75%から約80%に上がりました。効果はありますが大きくはないため、医師は一人ひとりのリスクに応じて判断します。
薬を使うことが多い目安:発熱や全身症状がある、しこりの周りに赤みが広がる、膿瘍が5cmを超える、複数ある、排膿しにくい、またはリスクのある部位(顔、手、性器など)、糖尿病や免疫力の低下、小さな子どもや高齢者、排膿後に良くならない膿瘍です。
一般的な菌(耐性でない菌)の場合に、大人によく使われる薬
セファレキシン(cephalexin)の内服 500mgを1日4回、5〜7日間
ジクロキサシリン(dicloxacillin)の内服 500mgを1日4回、空腹時に、5〜7日間
培養でMRSAが見つかった、または疑われる場合に使う薬
トリメトプリム・スルファメトキサゾール(trimethoprim-sulfamethoxazole)160/800mgを1〜2錠、1日2回。サルファ剤にアレルギーがある場合は使用できません。
ドキシサイクリン(doxycycline)100mgを1日2回。妊娠中の人や小さな子どもには使いません。
クリンダマイシン(clindamycin)300〜450mgを1日3回。ひどい下痢に注意が必要です。
通常の期間は5〜7日間で、反応によっては最長10日間まで延びることがあります。薬が効くかどうかを決めるのは、膿を出し切れていることと、菌がその薬に感受性があることです。症状は48〜72時間以内に良くなるはずです。良くならない場合は、医師が膿の袋が残っていないか、耐性菌でないかを調べます。膿が袋状に溜まっている場合、薬だけでは足りないことが多くあります。ただし、膿の袋がまだない初期の炎症性のしこりは、温める処置と薬の併用で反応することがあります。
薬を処方された人は、医師の指示どおり最後まで飲み切り、毎回、薬のアレルギー歴、妊娠の有無、持病を伝えてください。薬の選択と量は診察した医師が判断することです。上記の情報は考え方を理解していただくためのもので、ご自身で薬を買って使うためのものではありません。
膿瘍は何日で治りますか
期間は大きさと治療法によって異なります。健康な人のおおよその経過は次のとおりです。
自宅でケアして破れた、または小さくなった小さな膿瘍:約1〜3週間
切開排膿の後:痛みは24〜48時間で和らぎ、膿は2〜3日で減り、小さな傷は1〜2週間で閉じ、深い傷は2〜3週間かかることがあります。
残った硬い盛り上がり:傷が閉じた後も数週間触れることがあり、徐々に小さくなります。
色素沈着や瘢痕:肌の色が濃い人では、色素沈着が数か月続くことがあります。
糖尿病、免疫力の低下、または大きく複数の部屋に分かれた膿瘍の人は、これより治りが遅いことが多くあります。治療しないまま3〜5日たっても良くなる傾向がない膿瘍は、受診してください。
すぐに受診すべき危険なサイン
次のいずれかがある場合は、その日のうちに受診するか、救急外来へ行ってください。
38°C以上の発熱、悪寒、動悸、またはひどいだるさがある
赤みが数時間のうちに広がる、またはしこりから腕や脚に沿って赤い線が伸びている。ペンで赤みの縁に印をつけると広がりを確認できます。
膿瘍が顔の中央、目の周り、鼻、または上唇にある
糖尿病、免疫力の低下、免疫抑制薬の使用、または化学療法中である
しこりが5cmを超える、急に大きくなる、または複数の場所に同時にできている
膿瘍が手、指、肛門周囲、または性器にある
しこりの大きさに比べて痛みが非常に強い、皮膚が暗い紫色になる、水ぶくれがある、または感覚がない。深部の感染(necrotizing infection、壊死性感染症)の可能性があり、緊急の治療が必要です。
生後3か月未満の乳児
膿瘍の予防方法
小さな傷はきれいな水と石けんで洗い、治るまで覆っておきます。
ニキビや埋没毛をいじったり、皮膚をかいて傷にしたりしないでください。
タオル、カミソリ、スポーツウェアを共用せず、家族に膿瘍がある時は手洗いを増やしてください。
きつくない服を着て、汗をたくさんかいたら着替えてください。剃毛する部位に繰り返しできる場合は、しばらく剃毛を控えてください。
糖尿病がある場合は血糖をコントロールし、もともとある皮膚炎を治療してください。
要点
膿瘍は細菌感染による膿のかたまりで、多くは Staphylococcus aureus が原因です。
同じように腫れて痛いしこりでも、炎症を起こした嚢腫、HS、リンパ節炎、蜂窩織炎のことがあり、治療はそれぞれ異なります。
自分で絞ったり刺したりしないでください。小さな膿瘍は、1回10〜15分、1日3〜4回温めます。
1〜2cm以上のやわらかいしこりは、多くの場合、医師による排膿が必要で、薬だけでは足りません。
排膿後、痛みは24〜48時間で和らぐことが多く、傷は1〜3週間で閉じます。
発熱、赤みの広がり、顔の中央の膿瘍、糖尿病は、すぐに受診すべき理由です。
膿瘍についてよくある質問
膿瘍の原因は何ですか
膿瘍は細菌感染によるもので、多くは Staphylococcus aureus です。この菌は多くの人の皮膚や鼻の中にいます。菌が毛穴、傷、詰まった腺から入ると、体が菌を壁で囲み、膿の袋になります。糖尿病のある人、免疫力が低い人、摩擦や剃毛が多い人、ニキビや傷をいじりがちな人はできやすくなります。膿瘍は、食べ物や不潔さだけが原因ではありません。
膿瘍の治療法を教えてください
治療は大きさと部位によって異なります。健康な人の1cm未満の小さな膿瘍は、1回10〜15分、1日3〜4回の温湿布から始めます。1〜2cm以上のやわらかいしこりは、多くの場合、局所麻酔下での切開排膿が必要です。抗菌薬は、発熱、赤みの広がり、糖尿病、顔の膿瘍など、適応がある場合に補助として使います。薬の種類と期間は医師が選び、通常は5〜7日間です。
膿瘍を自分で治すには何ができますか
自宅でできるのは、清潔な布での10〜15分、1日3〜4回の温湿布、清潔な水と石けんでの洗浄、膿がにじむ場合のガーゼでの保護、痛い時のパラセタモールの服用です。してはいけないのは、絞ること、針で刺すこと、民間薬を貼ること、抗菌薬を自分で買って飲むことです。3〜5日ケアしても良くならない場合や、膿瘍が顔の中央にある、発熱がある、糖尿病がある場合は、待たずにすぐ受診してください。
膿瘍は何日で治りますか
自宅でケアして小さくなった、または破れた小さな膿瘍は、通常約1〜3週間で治ります。切開排膿をした場合、痛みは24〜48時間で和らぎ、小さな傷は1〜2週間、深い傷は2〜3週間で閉じます。小さな硬いしこりが数週間触れることがありますが、異常ではありません。糖尿病や免疫力の低い人は、これより治りが遅いことが多くあります。3〜5日たっても良くならない、または痛みや腫れが強くなる場合は、受診してください。
膿瘍は自然に治りますか
小さな膿瘍の一部は自然に治ります。特に1cm未満で、自然に破れて膿が出て、徐々に小さくなるものです。しかし、それより大きな膿の袋があるものは、排膿しないと完全には治らないことが多く、長く痛んだり、破れても再発したり、広がったりすることがあります。様子を見るのは、発熱がなく、顔の中央になく、糖尿病でもない小さな膿瘍に限られます。それ以外は医師の診察を受けてください。
芯のない膿瘍の原因と対処法
芯のない膿瘍は、膿がまだ集まっていない初期の膿瘍か、膿が皮膚の奥にあって芯として出てこない深い膿瘍のことがあります。炎症を起こした嚢腫やリンパ節炎など、別のしこりのこともあります。まず1日3〜4回温めてください。針で自分で膿を探してはいけません。3〜5日たっても小さくならない、急に大きくなる、または発熱がある場合は、医師の診察を受けてください。膿の袋があるかどうかを超音波検査で確認することがあります。
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この記事の情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療の指示ではありません。結果には個人差があります。薬を使う前には必ず医師に相談してください。
執筆:Patara Voravutinon 医師(皮膚科専門医)· 最終確認日 2026年11月4日


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