ケロイドと肥厚性瘢痕の違いとは?皮膚科医が解説する効果的な治療法と、手術で切除するだけでは再発しやすい理由
ケロイド (Keloid)は、体がコラーゲンを過剰に作り出すことで硬く盛り上がり、元の傷の境界を越えて正常な皮膚にまで広がり、自然にはほとんど小さくならない傷跡です。一方、肥厚性瘢痕 (Hypertrophic scar)も同じように盛り上がりますが、元の傷の範囲内にとどまり、多くは1〜2年かけて自然に平らになっていきます。
この2つの状態は見た目がとてもよく似ていますが、経過の見通しと治療法が異なり、特に手術の考え方が違います。肥厚性瘢痕は手術で修正しても比較的安全ですが、ケロイドは切除するだけで補助的な治療を行わないと約45〜100%が再発し、以前より大きくなることも少なくありません。この記事では、よくみられる部位ごとにケロイドを分け、医師が実際に使う薬の名称、濃度、注射の間隔、治療が効いているかどうかの目安をご紹介します。
ケロイドと肥厚性瘢痕の違いは?
最も簡単な見分け方は、傷跡が元の傷の境界を越えているかどうかと、時間がたつにつれて小さくなるのか大きくなるのかを見ることです。
範囲:肥厚性瘢痕は元の傷の線の内側にとどまります。ケロイドは傷の線の外へ広がり、カニの足のような形で横に広がる塊になることもあります。
目立ち始める時期:肥厚性瘢痕は傷ができてから4〜8週間以内に盛り上がることが多く、ケロイドは3か月から1年以上遅れて盛り上がり始めることがあります。
経過:肥厚性瘢痕は12〜24か月で自然に平らになり、色も薄くなることが多い一方、ケロイドは少しずつ大きくなり続けるか、そのままの状態が続き、自然にはほとんど小さくなりません。
症状:どちらもかゆみや痛みが出ることがありますが、ケロイドの方がかゆみやチクチクする痛みが強いことが多く、特に汗をかいたときや衣類でこすれたときに目立ちます。
できやすい部位:肥厚性瘢痕は関節の曲がる部分ややけどの跡など、傷に張力がかかる場所ならどこにでもできます。ケロイドは耳たぶ、胸、肩、背中の上部、あごのラインにできやすい傾向があります。
切除後:肥厚性瘢痕は手術で傷の向きを整えると改善することが多いですが、ケロイドは切除だけでは再発する可能性が非常に高くなります。
実際には、できて1年未満の傷跡は、はっきり区別できないことがあります。医師は病歴、部位、経過の変化を総合して判断します。区別がつかない場合は、すぐに手術をするよりも安全であるため、まずケロイドとして治療を始めることが多いです。
ケロイドの初期症状は?
初期のケロイドは、しこりのように見えるとは限りません。治っているはずの傷が平らにならない、という形で始まることが多いです。注意したいサインは次のとおりです。
傷は完全に閉じているのに、6〜8週間以上たっても赤みや濃いピンク色が残っている
触ると、周囲の皮膚に比べて傷が厚く硬くなってきている
傷跡が時々かゆくなったり、衣類が当たるとチクッと痛んだりする
ピアス穴の前側または後ろ側に、2〜3 mmほどの小さな硬いしこりがあり、ピアスを外しても小さくならない
傷の縁が正常な皮膚の上へはみ出し始めている
以前にケロイドになったことがある方や、ご家族にケロイドの方がいる場合にこれらのサインがあれば、早めに皮膚科を受診してください。1 cm未満で、できてから1年たっていないケロイドは、非常に大きくなった古いしこりよりも注射治療への反応が良好です。
ケロイドの原因とリスクのある人
ケロイドは、傷の中の線維芽細胞 (fibroblast) が活動を止めず、傷が閉じた後もコラーゲンを作り続けることで起こります。真皮に炎症が長引くことも関係し、皮膚への張力がこの過程を悪化させます。そのため、呼吸に合わせて動く胸のように、常に皮膚が引っ張られる部位に多くみられます。
はっきりしているリスク要因は次のとおりです。
遺伝:両親やきょうだいにケロイドがある場合、リスクは明らかに高くなります。
肌の色:色黒の方やアジア人は、色白の方よりもケロイドになりやすいです。
年齢:10〜30歳に多くみられ、幼い子どもや高齢の方では少なくなります。
ホルモン:思春期や妊娠中は、ケロイドが速く大きくなることがあります。
傷の種類:長く炎症が続く傷、感染した傷、3週間以上治りにくい傷。たとえばやけど、深い炎症性ニキビ、水ぼうそう、張力のかかる手術創などです。
ある部位でケロイドができたことがある方は、別の部位の新しい傷でもケロイドができる可能性があります。手術やピアスの穴あけ、皮膚の施術を受ける前には、毎回必ず医師に伝えてください。
手術や熱傷後の肥厚性瘢痕 (Hypertrophic scar)
特徴:元の傷の線にそって、赤またはピンク色に盛り上がります。境界の外へは広がらず、線状になったり、やけどの形に沿った面状になったりします。関節を引きつらせて、完全に伸ばせなくなることもあります。
原因:傷に張力がかかる、傷が感染する、または治りが遅いことです。特に、治るまでに2〜3週間以上かかったやけどが当てはまります。
重症度・緊急性:危険なものではなく、多くは1〜2年で自然に平らになります。ただし、関節が引きつって動かしにくい場合は、様子を見ずにご相談ください。
受診の目安:3か月以上たっても赤く盛り上がっている、かゆみが強くて眠れない、または手首、肘、首が引きつる場合です。
肥厚性瘢痕は、シリコーンシートや圧迫に最もよく反応するタイプです。最初の2〜3か月以内に始めると、傷はより早くはっきりと平らになります。ジェルやシリコーンシートの選び方の詳細は、傷跡の塗り薬の選び方と、どのくらい塗り続けるかをご覧ください。
ピアス穴による耳たぶのケロイド
特徴:ピアス穴の前側、後ろ側、または両側にできる、表面がなめらかでつやのある硬い丸いしこりです。大きさは豆粒ほどから2〜3 cmまでさまざまで、両耳にできる方もいます。
原因:耳たぶや耳の軟骨にあけたピアス穴の傷です。特に、穴あけ直後に炎症や感染を起こした場合や、ピアスの金属アレルギーで炎症が長引いた場合に起こりやすくなります。
重症度・緊急性:危険なものではありませんが、ゆっくりと大きくなり続けることが多く、放置するほどしこりが大きくなり、治療が難しくなります。
受診の目安:ピアスを外してから4〜6週間たってもピアス穴の硬いしこりが小さくならない場合や、しこりが大きくなり続ける場合です。
耳たぶのケロイドは、手術に補助療法を組み合わせると比較的よい結果が得られる唯一の部位です。耳たぶは圧迫イヤリング (pressure earring) で圧迫しやすいためです。手術後、医師は傷にステロイドを2〜4週間ごとに繰り返し注射し、圧迫イヤリングを1日12〜24時間、6〜12か月間続けて着けるよう指導することが一般的です。耳たぶのケロイドになったことがある方は、新たにピアス穴をあけないでください。
胸と肩のケロイド
特徴:硬く盛り上がった暗い赤色のしこりで、胸の中央では蝶やカニの形、肩では板状になることが多く、皮膚が引っ張られる方向に沿って横に広がります。
原因:炎症性ニキビ、ひっかき傷、胸の中央の手術創、上腕へのワクチン接種などです。はっきりした傷がないのに起こる場合もあります (spontaneous keloid)。
重症度・緊急性:ケロイドが最も速く大きくなり、再発も最も多い部位です。かゆみや痛みが強いことが多いです。
受診の目安:しこりがまだ小さいうちからです。広がるのを待たず、補助的な治療計画なしに手術で切除することも避けてください。
胸と肩は、多くの皮膚科医が手術を最初の治療として避ける部位です。呼吸や腕の動きによる張力で、新しい手術創が以前よりも大きなケロイドになるためです。主な治療は、しこりの中への注射を繰り返し行い、シリコーンシートを併用することです。
ニキビによるケロイド(背中、あご、あごの先)
特徴:以前に炎症性ニキビがあった部位にそって、硬く盛り上がったしこりが複数みられます。たとえば、あごのライン、あごの先、背中の上部、胸などです。緑豆ほどの小さなしこりもあれば、つながって板状になるものもあります。
原因:深い炎症性ニキビや大きく腫れたニキビ、ニキビを潰したり引っかいたりすることで、炎症が真皮の深くまで及ぶことです。
重症度・緊急性:炎症性ニキビが続いていると、新しいケロイドが次々にできます。ニキビも同時にコントロールする必要があります。
受診の目安:ニキビが治って2〜3か月以上たっても硬いしこりが残る場合や、まだ深い炎症性ニキビができている場合です。
ニキビによるケロイド治療の要は、まず炎症性ニキビを止めることです。そうしないと、古い部分に注射して小さくしても、新しい部分ができてしまいます。炎症性ニキビを抑える方法は炎症性ニキビの原因と、傷跡を残さない治療法と大きく腫れたニキビは潰してもいい?をご覧ください。なお、ニキビが治った後に残るへこみはケロイドではありません。ニキビ跡のクレーターは本当に埋まる?をご覧ください。
手術、帝王切開、外傷による傷のケロイド
特徴:手術後2〜6か月で、手術創が厚く盛り上がります。最初は肥厚性瘢痕に似ていますが、徐々に縫合線の外へ広がります。
原因:傷に張力がかかる、傷が感染する、糸が外れる、または皮膚が伸びる方向に対して垂直な傷であることです。
重症度・緊急性:危険なものではありませんが、傷がまだ赤いうちに治療すると、古い傷より反応が良好です。
受診の目安:手術創が3か月以上たっても赤く盛り上がってかゆい場合や、ケロイドができやすいと自覚していて、これから手術を受ける場合です。
ケロイドの既往があり、手術を予定している方(たとえば2回目の帝王切開など)は、あらかじめ外科医にお伝えください。よく使われる予防策は、傷にかかる張力が最小になるように縫うこと、傷が完全に閉じたら(手術後およそ2週間)シリコーンシートを始めること、そして場合によっては早い時期から傷にステロイドを注射することです。
剃髪後に後頭部にできる盛り上がり (Acne keloidalis nuchae)
特徴:髪の生え際より下の後頭部に、小さく硬い盛り上がりが複数でき、つながって首を横切る板状になることもあります。膿を持ったり、埋没毛を伴ったりすることもあります。
原因:頭皮に近い長さまで剃ったり刈ったりすることによる毛包の慢性的な炎症や、襟の摩擦です。縮れ毛の男性によくみられます。
重症度・緊急性:名前は似ていますが、一般的なケロイドとは異なる疾患です。短く剃り続けると、どんどん進行します。
受診の目安:後頭部の盛り上がりが1か月以上続く場合や、繰り返し膿を持つ場合です。
治療は、頭皮に近い長さまで剃るのをやめることから始めます。あわせて、ステロイド外用薬、clindamycin 1%の外用薬、doxycyclineの内服薬など、毛包の炎症を抑える薬を、医師の判断に従って使います。硬くなったしこりには、ケロイドと同様にステロイド注射を行います。
ケロイドは危険?がんになることはある?
ケロイドは傷跡の組織が増えたもので、がんではなく、がんに変わることもありません。ほかの臓器に広がることもありません。主な悩みは、かゆみ、痛み、引きつれ、そして見た目の自信への影響です。
ただし、ケロイドのように見えても実は違う場合があります。次のような場合、医師は組織を採取して検査 (生検) を検討します。
傷がなかったのに自然にしこりができ、数か月で異常に速く大きくなった
しこりが破れて潰瘍になる、出血しやすい、または1つのしこりの中に複数の色が混ざっている
注射を3回行ってもまったく反応がない
手のひらや足の裏など、ケロイドが通常できない部位にある
dermatofibrosarcoma protuberans (DFSP) など一部の腫瘍は、初期にはケロイドに似て見えます。小さな組織を採取して検査すると、はっきり区別できます。
ケロイドへのステロイド注射 (Triamcinolone acetonide)
しこりの中にステロイドを注射する方法は、自然には小さくならないケロイドや肥厚性瘢痕に対する主な治療です。使用する薬はtriamcinolone acetonideで、炎症を抑え、しこりの中のコラーゲン産生を減らします。
濃度:10〜40 mg/mLです。医師はしこりの厚さに応じて選びます。薄いしこりや顔には10 mg/mL、胸や耳たぶの厚く硬いしこりには20〜40 mg/mLを使います。
間隔:4〜6週間ごとです(最初は2〜3週間ごとと、より短い間隔で行う場合もあります)。
回数:多くの場合、しこりがはっきり平らになるまでに3〜6回以上の注射が必要です。
効果が現れる時期:かゆみや痛みは、1回目の注射の後から軽くなることが多く、しこりは2〜3回注射した後から柔らかくなり、平らになり始めます。
効果の程度:患者さんの約50〜100%で、しこりが部分的に、あるいはほぼ平らになるまで小さくなります。ただし、約9〜50%で再び大きくなることがあるため、経過観察が必要です。
注射の前に知っておくべき副作用には、周囲の皮膚よりへこむこと (atrophy)、しこりの周囲の皮膚の色が薄くなること (hypopigmentation)、毛細血管が目立つことなどがあります。特に濃度が高い場合や、薬がしこりの外にしみ出した場合に起こりやすくなります。多くは6〜12か月で徐々に改善します。女性では、大量に注射した後、一時的に月経の周期が乱れることがあります。しこりが皮膚と同じ高さに平らになったら注射をやめること、そして十分な間隔をあけることで、これらの副作用を減らせます。
ステロイドだけでは不十分な場合のほかの注射:5-FU、verapamil、botulinum toxin
ステロイドを3〜4回注射してもしこりが半分も平らにならない場合や、しこりの周囲の皮膚が薄くなって色が抜けてきた場合、医師はほかの薬に変更したり、追加したりすることがあります。
5-fluorouracil (5-FU) 50 mg/mL:線維芽細胞の増殖を抑えます。多くの場合、triamcinoloneと9:1の割合で混ぜて使います(5-FU 0.9 mLとtriamcinolone 40 mg/mL 0.1 mL)。1〜4週間ごとに注射します。複数の研究で、ステロイド単独より効果が高く、皮膚のへこみも少ないとされています。注射中の痛みは強く、注射部位に浅い潰瘍や色素沈着が起こることがあります。妊娠中や授乳中の方は使用できません。
verapamil 2.5 mg/mL:しこりの中に3〜4週間ごとに注射する薬です。ステロイドによる皮膚の菲薄化を避けたい場合の選択肢になります。効果の現れはやや遅めです。
botulinum toxin type A:傷の周囲の筋肉の張力を下げ、かゆみを軽くします。よく動く部位にある傷の補助として使います。最初の2つの薬に比べて、データはまだ少ない状況です。
どの薬も医師が注射する必要があります。薬の種類、濃度、混合の割合は、一人ひとりのしこりの大きさ、部位、これまでの治療歴をもとに医師が判断します。
シリコーンシートとシリコーンジェルはどのくらい使う?
シリコーンは、自宅で行う治療のなかで最も根拠が整っています。皮膚を覆って潤いを保ち、コラーゲン産生を促す信号を弱めることで働きます。
始める時期:傷が完全に閉じ、かさぶたも浸出液もなくなってからです。通常は、手術後または抜糸後およそ2週間です。
1日の使用時間:シリコーンシートは1日12〜24時間貼り、1日1回はがして洗います。シリコーンジェルは薄く塗り、1日2回です。
期間:少なくとも12週間で、6か月以上必要な方も多くいます。
効いているサイン:4〜8週間以内に、傷が柔らかくなり、赤みが薄れ、かゆみが軽くなります。
シリコーン単独でも、できたばかりの肥厚性瘢痕やケロイドには有効ですが、何年も前からある大きなケロイドを小さくする効果はあまり期待できません。古いしこりの場合、シリコーンは注射や手術の後に再発を減らすための補助として使います。
圧迫サポーターと圧迫イヤリング (Pressure therapy)
持続的に圧迫すると、コラーゲンを作る細胞へ届く血液と酸素が減り、傷跡が平らになります。やけどの跡や耳たぶのケロイドによく使われます。
圧力:約24〜30 mmHgです。しっかり圧迫する必要がありますが、指先や皮膚が白くなったり、しびれたりするほど強くしてはいけません。
時間:1日12〜24時間です。
期間:6〜12か月です。
実際に行える部位:耳たぶ(圧迫イヤリング)、やけど後の腕や脚、体幹(オーダーメイドの圧迫サポーター)です。胸や肩では実施が難しくなります。
主な限界は、きちんと継続して着ける必要があることです。着けたり着けなかったりすると、効果は大きく下がります。
ケロイドの凍結療法 (Cryotherapy)
液体窒素による凍結療法では、しこりの組織を壊死させて小さくします。小さなしこりから中くらいのしこりに向いており、ステロイド注射と併用することが多いです。凍結の後はしこりが腫れて柔らかくなり、薬を注射しやすくなるためです。
3〜4週間ごとに行います。アジア人にとって大きな欠点は、凍結した部分の皮膚の色が薄くなり、白い斑点状になりやすいことで、永続することもあります。そのため、顔のように目立つ部位や、とても色黒の方にはあまり用いられません。
レーザーでケロイドは治療できる?
レーザーは役立ちますが、ケロイドの主な治療ではなく、補助的な治療です。問題に合った種類を選ぶ必要があります。
血管レーザー:まだ赤い傷跡の赤みと血管を抑えます。かゆみを軽くし、傷を柔らかくするのに役立ちます。できてから1年以内の肥厚性瘢痕によく使われ、通常は4〜6週間ごとに3〜5回行います。
フラクショナルレーザーと炭酸ガスレーザー:傷跡に小さな穴をあけて皮膚の構造を整え、その後に塗る薬や注射する薬が深くまで届きやすくなるようにします。厚い肥厚性瘢痕ややけどの跡に使います。
してはいけないのは、炭酸ガスレーザーだけでケロイドを丸ごと切除したり焼いたりすることです。手術だけの場合と変わらず、再発率が高くなります。起こりうる副作用に、レーザー後の色素沈着 (PIH) があり、日本人を含むアジア人の肌ではよくみられます。結果は人によって異なり、複数回の施術が必要です。盛り上がっていない黒ずみや赤みについては、ニキビ跡の赤みと黒ずみの見分け方をご覧ください。
なぜケロイドを切除するだけだと、以前より大きく再発しやすいの?
ケロイドを切除することは、傷に対してコラーゲンを作りすぎる体質の人に、新しい傷を作ることになります。元より長い新しい傷は、以前より大きなケロイドになる可能性があります。研究による数値のおおよその目安は次のとおりです。
手術のみ:約45〜100%が再発します。
手術後に傷へステロイドを繰り返し注射:部位によって異なりますが、再発は半分程度かそれ以下に下がります。
手術後24〜48時間以内に傷へ放射線を照射:再発は約10〜20%です。ほかの治療に反応しない大きなケロイドに使う方法で、放射線治療部門のある病院で行います。子どもや妊娠中の方には使いません。
医師が手術を検討するのは、しこりがとても大きい場合、茎がある場合(耳たぶにぶら下がるようなケロイドなど)、または注射に反応しない場合です。そして、手術後の補助治療を最初から計画しておく必要があります。先に切って、後から考えるものではありません。
ケロイドを小さくするには?しこりの大きさと経過年数に応じた治療計画
すべての人に合う方法は一つではありません。皮膚科医がよく用いる方針は、しこりの特徴ごとに次のように分けられます。
できて3〜6か月未満で、まだ赤い肥厚性瘢痕:シリコーンシートまたはジェルを12週間以上使い、可能であれば圧迫も併用します。2〜3か月で改善しない場合は、低濃度のステロイド注射を追加します。
1〜2 cm未満の小さなケロイド:triamcinolone 10〜40 mg/mLを4〜6週間ごとに注射し、シリコーンを併用して、しこりが皮膚と同じ高さに平らになるまで続けます。
ステロイドを3〜4回注射しても半分も小さくならないケロイド:5-FUとtriamcinoloneの混合に変更するか、凍結療法やレーザーを併用します。
耳たぶのケロイドや、茎のある大きなしこり:手術で切除し、傷へのステロイド注射を2〜4週間ごとに行い、圧迫イヤリングを6〜12か月併用します。
何度も再発する大きなケロイド:手術に術後の放射線治療を組み合わせます。放射線治療のある病院へ紹介します。
現実的な目標は、しこりが平らになり、柔らかくなり、かゆみや痛みがなくなり、それ以上大きくならないようにコントロールすることです。完治することや、再発しないことを保証できる方法はありません。治療によく反応した方は、最初の1年は3〜6か月ごとに医師の経過観察を受けてください。しこりが盛り上がり始めた段階で再度注射する方が、大きくなるまで待つよりも簡単だからです。
傷跡が薄くなるまでに何日かかる?
どんな傷も、ほとんどの方が思うより長い回復の過程をたどります。
0〜3週間:傷が閉じます。新しい皮膚はまだ薄く、赤みがあります。
3週間〜3か月:傷跡が最も赤くなり、盛り上がることもあります。肥厚性瘢痕やケロイドが現れ始める時期です。
3〜12か月:通常の傷は、少しずつ薄くなり、平らになっていきます。
12〜24か月:傷跡が落ち着き、色が正常な皮膚に近づきます。
そのため、2か月たってもまだ赤い傷が、必ずしも異常というわけではありません。ただし、傷がだんだん厚くなったり、境界の外へ広がり始めたりした場合は、1年たつのを待たずに医師の診察を受けてください。まだ閉じていない新しい傷では、早く治るようにケアすることが、傷跡の最もよい予防になります。傷の洗い方と覆い方はすり傷の洗い方、覆うべきか、治るまでの日数をご覧ください。
ケロイドの予防:ピアス、手術、ニキビの後に
ケロイドができやすいと自覚している方には、後から治療するよりも予防の方が常に効果的です。
必要のないピアスの穴あけ、タトゥー、美容施術は避ける:特に胸、肩、耳たぶは避けてください。
手術が必要な場合:ケロイドの既往を外科医に伝え、張力を減らす縫合と補助治療を手術前から計画してもらいます。
傷が早く治り、感染しないようにケアする:きれいに洗い、傷を湿潤に保ち、かさぶたをはがさないでください。
シリコーンを早く始める:傷が完全に閉じたらすぐに始め、少なくとも12週間続けてください。
炎症性ニキビを早めにコントロールする:胸、背中、あごのニキビを潰したり引っかいたりしないでください。
新しい傷には日焼け止めを:最初の6〜12か月は使用してください(日焼け止めがケロイドを直接予防するわけではありませんが、傷跡の色がなじみやすくなります)。
ケロイドで皮膚科を受診するタイミング
傷跡が3か月以上たっても赤く盛り上がっている、または元の傷の境界を越えて広がり始めた
ピアス穴に硬いしこりがあり、小さくならない
かゆみや痛みで睡眠や生活に支障が出ている
傷跡が関節を引きつらせて、動かしにくい
しこりが速く大きくなる、破れる、出血する、または傷がなかったのに自然にできた
手術やピアスの穴あけを予定していて、以前にケロイドになったことがある
当院の傷跡治療サービスの概要は、傷跡、ニキビ跡のクレーター、ケロイドの治療をご覧ください。
ポイントのまとめ
ケロイドは元の傷の境界を越えて広がり、自然にはほとんど小さくなりません。肥厚性瘢痕は傷の範囲内にとどまり、多くは1〜2年で自然に平らになります。
ケロイドはがんではありませんが、速く大きくなる、破れる、傷がなかったのに自然にできたしこりは、医師の診察を受けてください。
主な治療は、triamcinolone 10〜40 mg/mLを4〜6週間ごとに注射し、シリコーンシートまたはジェルを少なくとも12週間併用することです。
ステロイドを3〜4回注射してもしこりが半分も小さくならない場合、医師は5-FUとステロイドの混合、凍結療法、またはレーザーの追加に変更することがあります。
ケロイドを切除するだけにしてはいけません。再発率が45〜100%で、手術後には必ず補助治療が必要です。
ケロイドができやすい方は、ピアスの穴あけを避け、手術の前には毎回必ず医師に伝えてください。
ケロイドについてよくある質問
ケロイドの初期症状は?
ケロイドの初期症状は、傷が閉じているのに6〜8週間以上濃い赤みが残る、触ると厚く硬くなってくる、時々かゆくなったりチクッと痛んだりする、傷の縁が元の傷の線の外へ少しずつはみ出してくる、といったものです。耳たぶでは、ピアスを外しても小さくならない2〜3 mmの硬いしこりとして、ピアス穴に始まることが多いです。ご家族にケロイドの方がいる場合は、この段階で受診してください。できたばかりの小さなしこりは、すでに大きくなった古いしこりより注射に反応しやすいためです。
ケロイドを小さくするには?
最も効果的な方法は、steroid薬のtriamcinolone acetonide 10〜40 mg/mLを4〜6週間ごとにしこりの中へ注射することです。多くの場合3〜6回必要で、あわせて1日12〜24時間のシリコーンシートを少なくとも12週間貼ります。3〜4回注射してもしこりが半分も小さくならない場合、医師は5-FUとステロイドの混合に変更したり、凍結療法やレーザーを追加したりすることがあります。塗り薬や傷跡を消すクリームだけでは、すでに硬いしこりになったケロイドを小さくすることは通常できません。
レーザーでケロイドは治療できる?
はい、ただし補助的な治療であり、主な治療ではありません。血管レーザーは赤みとかゆみを軽くし、傷を柔らかくします。フラクショナルレーザーや炭酸ガスレーザーは傷跡の表面を整え、薬が深くまで届きやすくします。多くは注射と併用し、4〜6週間あけて複数回行う必要があり、一時的な色素沈着が残ることもあります。レーザーだけでケロイドを丸ごと切除する方法は、手術と変わらず再発率が高くなります。
ケロイドは危険?
ケロイドはがんではなく、がんに変わることもありません。ほかの部位に広がることもありません。主な悩みは、かゆみ、痛み、引きつれ、見た目です。ただし、傷がなかったのに自然にできたしこり、数か月で異常に速く大きくなったしこり、破れたり出血したりするしこり、注射にまったく反応しないしこりは、皮膚科医の診察を受け、組織を採取して検査することがあります。一部の腫瘍は初期にはケロイドに似て見えるためです。
耳のケロイドの原因は?
耳のケロイドの多くは、耳たぶや耳の軟骨にあけたピアス穴の傷が原因です。特に、ピアス穴が炎症や感染を起こした場合や、ピアスの金属アレルギーで炎症が長引いた場合に、ケロイドになりやすい遺伝的体質のある方に起こります。大きなしこりには、手術で切除し、傷へのステロイド注射を2〜4週間ごとに繰り返し、圧迫イヤリングを1日12〜24時間、6〜12か月間着けることで、よい結果が得られています。以前に耳のケロイドになったことがある方は、新たにピアス穴をあけないでください。
傷跡が薄くなるまでに何日かかる?
一般的な傷跡は、数日では薄くなりません。数か月から数年かかります。傷ができてから3週間〜3か月は、傷が最も赤く盛り上がる時期です。その後、3〜12か月で少しずつ薄くなり平らになり、12〜24か月で落ち着きます。傷がだんだん厚くなったり、元の傷の境界を越えて広がったりする場合は、肥厚性瘢痕やケロイドの可能性があるため、1年たつのを待たずに受診してください。傷が閉じたらすぐにシリコーンを始めると、傷跡が早く平らになり、薄くなりやすくなります。
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執筆:Patara Voravutinon 医師(皮膚科専門医)・最終確認日 2026年10月12日
この記事の内容は一般的な情報であり、診断や個人に合わせた処方ではありません。薬の選択、濃度、回数、治療法は、診察後の医師の判断によります。治療結果には個人差があります。注射、凍結療法、レーザー、手術にはリスクや副作用が伴うことがあるため、必ず医師の評価を受け、医師が行ってください。


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