ニキビ跡のクレーターは治せる?皮膚科医が解説する種類・治療法・種類に合わせて選ぶ理由
ニキビ跡のクレーター(Atrophic acne scar)は、炎症性のニキビが治ったあとに残る、皮膚がへこんだ状態の瘢痕です。真皮のコラーゲンが恒久的に失われているため、時間とともに自然に薄くなる色素沈着や赤みとは異なり、皮膚科領域でも治療が難しい悩みのひとつです。「レーザー1台であらゆるクレーターを治せる」と誤解されがちですが、実際にはクレーターにはいくつかの種類があり、治療への反応は大きく異なります。種類に合わない方法を選ぶと、費用も時間も無駄になり、期待外れに終わることがあります。この記事では皮膚科専門医が、クレーターの原因、種類、種類ごとの治療法、そして「治療前にクレーターの種類を見極めること」がレーザー機器の選択より重要である理由を解説します。
クレーターの原因
クレーターは、ニキビの炎症、特に膿疱、嚢腫、皮下のしこりといった深い炎症性ニキビが、真皮のコラーゲンとエラスチンを破壊することで生じます。体の修復が不十分だと、皮膚がへこんで窪みになります。クレーターができやすくなる要因には次のようなものがあります。
重度または深い炎症性ニキビを、治療せずに長く放置すること
ニキビをつぶしたり触ったりすることで、炎症と組織の損傷が増します
ニキビの炎症が続いた期間の長さ(炎症が長いほどリスクが高まります)
体質や、人それぞれの瘢痕のできやすさ
重要なのは、クレーターは組織が恒久的に失われた状態であり、時間とともに自然に薄くなることが多いニキビ後の色素沈着(PIH)や赤み(PIE)とは異なるという点です。治療を始める前にこの2つを区別することが大切です。色素沈着や赤みには、クレーターのような深部に届く施術は必要ありません。

クレーターの種類と、見分けが必要な理由
クレーターは形状によって大きく3種類に分けられ、これが治療法を選ぶうえでの要となります。
Ice pick(アイスピック型。針で刺したような、狭くて深い窪み)入口は狭く、真皮に向かって急に深く落ち込み、縁がはっきりしています。一般的な面状のレーザーに最も反応しにくいタイプです。
Boxcar(ボックスカー型。縁が切り立った底の平らな窪み)入口が広く、四角い窪みのように縁がくっきり立っています。浅いものと深いものがあります。
Rolling(ローリング型。縁がなだらかで波打つ窪み)皮下の線維組織(癒着)が皮膚を引っ張ることで生じ、皮膚が波打って見え、境目がはっきりしません。
種類を見分ける必要があるのは、それぞれ反応する治療法が異なるからです。たとえば、線維組織の癒着で皮膚が引っ張られている rolling 型は、癒着を切り離す方法(subcision)によく反応しますが、表面を削るだけの治療では効果が限られます。深い ice pick 型は、面全体にレーザーを当てるのではなく、ピンポイントで酸を用いる方法や切除が必要になることが多くあります。実際には、複数の種類のクレーターが混在している患者さんがほとんどで、良い結果を得るには複数の方法を組み合わせる(combination)必要があります。
クレーターの治療法
医師は、クレーターの種類と深さに応じて方法を選び、組み合わせます。
Subcision(クレーター下の線維組織を切り離す方法)針や専用の器具を皮膚の下に入れ、皮膚を引き下げている線維組織を切り離します。rolling 型に特に適しており、皮膚を持ち上げ、新しいコラーゲンの生成を促します。
TCA CROSS(酸をピンポイントで用いる方法)高濃度のトリクロロ酢酸を窪みの中に局所的に注入します。入口が狭く深い ice pick 型や boxcar 型に適しており、底の部分に組織が新しくでき、窪みが浅くなるよう促します。
Punch techniques(パンチによる方法)たとえば punch excision は深い窪みをくり抜いて縫合する方法、punch elevation は boxcar 型の底を持ち上げて皮膚の高さに合わせる方法です。ほかの方法で効果が得られない、局所的な深い窪みに適しています。
Fractional laser と microneedling with RF広い範囲でコラーゲンの生成を促します。肌全体の質感の改善や浅いクレーターに適しており、上記の方法で深い窪みに対処したあとの仕上げとして用いられることが多い方法です。
フィラー(filler)一部のクレーターを一時的に持ち上げたり、コラーゲンの生成を促したりします。場合によって補助的に使われます。
医師の基本方針は、まず深い窪みや線維組織の癒着にピンポイントの方法で対処し、そのあと肌全体をレーザーや microneedling で整えるというものです。治療は通常、数か月の間隔をあけて複数回行い、効果は少しずつ現れます。1回で完全に治るわけではありません。
現実的な見通し
ほとんどのクレーターははっきりと改善しますが、100パーセント完全に消えるわけではありません。現実的な目標は、窪みを浅くし、満足できる程度に肌を滑らかにすることです。一般には、複数の方法を組み合わせて複数回行う必要があります。1回で完全に治ると約束するような説明は、医学的な現実と合わないことがほとんどです。また、現在あるニキビを先に落ち着かせてください。新しい炎症性ニキビが続くと、クレーターが増え続けるためです。
アジア人の肌で特に注意すべき点
アジア人の肌は、施術やレーザーのあとに炎症後色素沈着(PIH)が起こりやすい傾向があります。そのため、しっかりとした日焼け対策と、施術後のケアに関する指示の遵守が必要で、医師はレーザーの出力を肌の色に合わせて調整するのが一般的です。強すぎる施術は、色素沈着や新たな瘢痕のリスクを高めます。盛り上がった瘢痕やケロイドができたことがある方は、必ず事前に医師に伝えてください。
避けていただきたいこと
「レーザー1台で、あらゆる種類のクレーターが1回で治る」とうたう広告を鵜呑みにしないでください。
ニキビの炎症が再燃している間は、クレーターの施術を受けないでください。先にニキビを落ち着かせましょう。
窪みを浅くしようとして、強い腐食性の薬剤やピーリング用の酸を自己判断で使わないでください。傷や色素沈着のリスクがあります。
医師にクレーターの種類を診断してもらわずに治療を始めないでください。方法を誤ると効果が得られません。
よくあるご質問(FAQ)
ニキビ跡のクレーターは完全に治せますか?
ほとんどのクレーターははっきりと改善しますが、コラーゲンが恒久的に失われているため、100パーセント完全に治ることは通常ありません。現実的な目標は、複数の方法を組み合わせ、複数回の治療で窪みを浅くし、肌を滑らかにすることです。
クレーターはレーザーだけで十分ですか?
深いクレーターには通常、十分ではありません。ice pick 型や rolling 型は、面状のレーザーへの反応が限られるためです。そのため医師は、まず subcision、TCA CROSS、punch などで深い窪みに対処し、そのあとレーザーや microneedling で肌全体を整えることが多くあります。
クレーターの種類によって何が違いますか?
Ice pick 型は針で刺したような狭くて深い窪み、boxcar 型は縁が切り立って底が平らな窪み、rolling 型は線維組織に引っ張られて縁がなだらかに波打つ窪みです。種類によって治療への反応が異なるため、方法を選ぶ前に医師の診察を受ける必要があります。
クレーターの治療は何回必要ですか?
一般に、月1回程度、またはそれ以上の間隔で複数回行います。回数は、種類、深さ、用いる方法によって異なります。効果は少しずつ積み重なって現れ、1回で治るわけではありません。
ニキビ後の色素沈着や赤みとクレーターは違いますか?
違います。色素沈着(PIH)や赤み(PIE)は、皮膚が平らなままで、時間とともに自然に薄くなることが多い跡です。一方、クレーターは皮膚が恒久的にへこんだ状態です。そのため、治療法はまったく異なります。
ニキビがある間でもクレーターの治療はできますか?
まず炎症性ニキビを落ち着かせてください。新しいニキビが再燃すると、クレーターが増え続けるためです。また、炎症のある肌に施術を行うと、刺激や色素沈着のリスクが高まります。
執筆:Patara Voravutinon 医師(皮膚科専門医)· 最終確認日 2026年8月3日


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