乳首のかゆみの原因は?受診を急ぐべき乳首の発疹とは
乳首のかゆみ(nipple itch または nipple pruritus)は、乳首と乳輪に起こるかゆみのことで、多くは乾燥、摩擦、乳首の湿疹(nipple eczema)、接触皮膚炎(contact dermatitis)、または授乳期のカンジダ(Candida)感染が原因です。乳首の片側だけに赤み、皮むけ、じゅくじゅくした浸出液があり、2〜3週間たっても良くならない場合は、まれな乳がんの一種である乳首のパジェット病(Paget's disease of the nipple)を見分けるための検査が必要です。
かゆみだけで皮膚が正常なままの場合、それががんの最初のサインであることはほとんどありません。皮膚科医が重視するのは、発疹の見た目、片側か両側か、どのくらい続いているか、これまで塗った薬への反応です。この記事では、男性や授乳中の方を含め原因を一つずつ整理し、湿疹と真菌の見分け方、医師が使う薬の名前、受診時の流れを説明します。
乳首のかゆみは片側か両側か、何がわかる?
何側に出ているかは考え始めるきっかけになりますが、診断の結論ではありません。
両側同時:乾燥、摩擦、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、疥癬(かいせん)であることが多いです。
片側だけで、数日前に始まった:下着による摩擦、赤ちゃんがよく吸う側の授乳によるキズ、局所的な感染であることが多いです。
片側だけで2〜3週間を超える:赤み、皮むけ、かさぶた、浸出液がある場合は検査を受けてください。原因の大半はがんではありません。
皮膚は正常でかゆみだけ:乾燥、衣類の素材、ホルモンの変化に関係していることが多いです。
乾燥によるかゆみ(xerosis)
特徴:断続的にかゆみがあり、乳輪や乳房まわりの皮膚が乾いてつっぱり、細かい粉をふきます。浸出液はなく、多くは両側で、腕や脚にも乾燥があります。
原因:乾燥した空気や寒さ、長時間の熱いお風呂、皮脂を落としすぎる石けん、加齢による皮膚の乾燥です。
重症度・緊急度:危険ではなく、自宅でケアできます。ワセリン(petrolatum)または無香料の保湿クリームを1日2回塗ると、多くは1〜2週間で改善します。
受診の目安:2週間塗っても治らない、はっきりした赤い発疹がある、または発疹がないのに全身がかゆい場合です。
ランニングによる乳首の摩擦(jogger's nipple)
特徴:乳首がヒリヒリして赤くなり、すりむけ、ときに血がにじんで衣類につきます。両側に起こることがあり、長時間の運動の後に出ます。
原因:汗とともに衣類が乳首を繰り返しこすることで起こります。男女を問わず長距離ランナーに見られ、生地が粗いシャツや縁が皮膚に食い込む下着を着ている方にも起こります。
重症度・緊急度:危険ではありません。浅いキズは、摩擦をやめれば3〜7日ほどで良くなることが多いです。運動前にワセリンを塗り、なめらかな素材のシャツを選ぶと再発を減らせます。
受診の目安:キズに膿がある、腫れる、痛みが強くなる、または運動をやめて2週間以上たっても発疹が残る場合です。
乳首の湿疹(nipple eczema)
特徴:赤くかゆい発疹で、境界ははっきりせず、皮がむけます。繰り返しかくと皮膚が厚くなり、炎症が強いとじゅくじゅくしてかさぶたになります。多くは乳輪から始まり、両側に出ます。
原因:アレルギー体質の皮膚(atopy)によるもので、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)と同じ体質です。湿疹、ぜんそく、アレルギー性鼻炎の既往がある思春期の女性に多く、汗、粗い素材の衣類、摩擦、授乳で悪化します。
重症度・緊急度:危険ではありませんが、日常生活に支障が出て、再び感染することもあります。正しく診断されれば、塗り薬を始めてから1〜2週間で良くなることが多いです。
受診の目安:弱いステロイドの塗り薬を7日間塗っても良くならない、片側だけに出ている、または何度も再発して頻繁に塗る必要がある場合です。
乳首の接触皮膚炎(contact dermatitis)
特徴:赤くてかゆく、ヒリヒリし、ときに水ぶくれができます。発疹の形は、下着の縁のように物が触れた場所と一致し、多くは触れてから24〜72時間以内に始まります。
原因:洗濯洗剤、柔軟剤、香料、保湿クリーム、衣類の染料、ブラのホックや乳首ピアスに含まれるニッケル、テープ、母乳パッド、ラノリン(lanolin)のクリーム、ときには塗り薬そのものが原因になります。この仕組みはアレルギー性接触皮膚炎(contact dermatitis)の記事で詳しく説明しています。
重症度・緊急度:危険ではありません。原因物質をやめると、発疹は2〜4週間で治まることが多いです。使い続けると、塗り薬では一時的にしか抑えられません。
受診の目安:原因が見つからない、発疹が繰り返す、または授乳中の方が乳首用クリームにかぶれたと疑う場合です。医師はパッチテスト(patch test)を行うことがあり、結果は約48時間後と96時間後に読み取ります。
乳首まわりと乳房の下の真菌感染(白癬とカンジダ)
特徴:白癬(tinea corporis)は、縁がはっきり盛り上がった赤い輪で、縁に細かいふけがあり、中央は薄く、少しずつ広がります。皮膚のカンジダ症(cutaneous candidiasis)は、乳房の下のしわに湿った赤い発疹ができ、主な発疹のまわりに小さなブツブツが散らばります。
原因:湿気、汗、きつい下着、体重が多いこと、糖尿病、そして以前にステロイドを塗ったことです。
重症度・緊急度:危険ではありませんが自然には治りにくく、白癬はペットや他の人の皮膚との接触でうつります。
受診の目安:本当に真菌かどうかわからない、抗真菌薬を2週間塗っても良くならない、または糖尿病がある場合です。医師は皮膚をこすり取って水酸化カリウム(KOH)液で顕微鏡検査をし、結果は数分から数十分でわかります。
授乳中の乳首のかゆみ:カンジダ
特徴:乳首が濃いピンク色で、つやがあり、ときに皮がむけます。母親は両側にヒリヒリしたかゆみがあり、授乳後に焼けるような鋭い痛みを感じます。赤ちゃんの口の中にぬぐっても取れない白い苔のようなものができたり、おむつかぶれが強く出たりすることがあります。
原因:カンジダは、唾液や母乳で湿った皮膚、特に乳首にひび割れがあるとき、母親や赤ちゃんが抗生物質を使った後、母親が糖尿病のときに増えます。
重症度・緊急度:危険ではなく、多くの場合は授乳を続けられます。ただし、感染が行ったり来たりしないよう、母親と赤ちゃんの口を同時に治療する必要があります。また、授乳中の乳首の痛みの多くは、吸わせ方が合っていないことや炎症性の発疹によるものなので、自分でカンジダと決めつけないでください。
受診の目安:乳首の痛みが1週間以上続く、抗真菌薬を7日間使っても良くならない、または赤ちゃんの口に白い苔があって飲む量が減っている場合です。
吸わせ方が合わないことによるかゆみと痛み
特徴:乳首が割れ、先端や根元にキズができます。赤ちゃんが吸い始めるときの痛みが強く、キズが治り始めるとかゆみが出ます。赤ちゃんが乳房を離した後、乳首がくさび形につぶれて見えることがあります。
原因:赤ちゃんが乳輪まで深くくわえていない、授乳の姿勢が合っていない、舌小帯短縮(舌が引っ張られる状態)、または搾乳器の吸引圧が高すぎることです。血管の収縮(vasospasm)により、授乳後に乳首が白くなって痛む方もいます。
重症度・緊急度:危険ではありませんが、細菌の入り口になります。吸わせ方を直せば、キズは数日で良くなることが多いです。きれいな水で拭いて乾かすと、刺激を減らせます。
受診の目安:キズが1週間たっても良くならない、膿がある、または乳房が赤く腫れて38.5度以上の熱が出た場合です。乳腺炎(mastitis)の可能性があり、24時間以内に受診してください。
乳首の細菌感染
特徴:じゅくじゅくした発疹、はちみつのような黄色いかさぶた、小さな膿のブツブツ、痛みとまわりの赤みや腫れがあります。
原因:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が、ひび割れ、ひっかきキズ、またはかいてすりむけた湿疹から入り込みます。
重症度・緊急度:中程度です。治療が遅れると、蜂窩織炎や乳房の膿瘍に進むことがあります。
受診の目安:1〜2日以内に受診してください。熱がある、乳房が腫れて熱い、または押すと痛いしこりが触れる場合はすぐに受診してください。
乳首の透明な水ぶくれの集まり:ヘルペス
特徴:赤みのある部分に、1〜3ミリの透明な水ぶくれが集まって並びます。水ぶくれが出る前にヒリヒリ感や痛みが先に出て、その後、浅いただれになり、7〜10日でかさぶたになります。
原因:単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)で、ヘルペスの傷に直接触れることでうつることがあります。
重症度・緊急度:健康な成人では重くありませんが、新生児には非常に危険です。乳房や乳首に病変がある場合は、かさぶたが完全に乾くまでその側の授乳をやめ、赤ちゃんを抱く前に毎回手を洗ってください。
受診の目安:水ぶくれに気づいてから1〜2日以内に受診してください。特に月齢の小さい赤ちゃんに授乳している方は急いでください。
妊娠中の乳首のかゆみ
特徴:乳首、乳房、お腹に軽いかゆみがあり、乳輪が濃くなり、皮膚がつっぱります。妊娠中期から、黄色い母乳がにじむ方もいます。
原因:乳房が大きくなって皮膚が伸び、乾燥しやすくなり、ホルモンが変化するためです。全身のかゆみは妊婦さんの約5人に1人に見られます。もともとあるアトピー性皮膚炎がこの時期に悪化することもあります。
重症度・緊急度:多くは危険ではありません。ワセリンを塗り、サイズの合った下着をつけると楽になります。妊娠後期にお腹の妊娠線に沿って出るかゆみのある発疹(polymorphic eruption of pregnancy)は、多くは産後4〜6週間で自然に治ります。しかし、発疹がないのに手のひらや足の裏がとてもかゆく、特に夜に強い場合は、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(intrahepatic cholestasis of pregnancy)の可能性があり、赤ちゃんに影響します。
受診の目安:手のひらや足の裏のかゆみ、白目の黄ばみ、濃い色の尿がある場合は、胆汁酸と肝機能を調べるため24〜48時間以内に産科医へ伝えてください。また、塗り薬や飲み薬は使う前に必ず医師に相談してください。
夜に全身がかゆく、乳首にブツブツがある:疥癬
特徴:乳首や乳輪、指の間、手首、わきの下、へそ、足のつけ根に、小さな赤いブツブツと短くくねった線が出ます。夜に強くかゆく、同居の家族もかゆくなることが多いです。乳首は女性で特によく見られる部位です。
原因:ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)が原因で、長時間の肌の接触でうつります。初めて感染した場合、症状は感染から4〜6週間後に始まることが多いです。詳しくは疥癬(かいせん)、夜のかゆみで疑うポイントの記事をご覧ください。
重症度・緊急度:危険ではありませんが、家庭内で急速に広がります。一緒に暮らす全員が同時に治療する必要があり、寝具や衣類は熱いお湯で洗います。正しい治療の後も、かゆみがさらに2〜4週間残ることがあります。
受診の目安:夜に全身がかゆい、家族もかゆい、または薬を塗っても4週間後に新しいブツブツが出る場合です。
乳首のパジェット病(Paget's disease of the nipple)
特徴:乳首の片側だけに、赤み、皮むけ、かさぶた、または浸出液が出ます。多くは乳首の先端から始まり、乳輪に広がります。かゆみ、ヒリヒリ感、ピリピリ感があり、乳首がへこむ、皮膚がただれる、乳首から分泌物が出る方もいます。この発疹は治らず、ステロイドを塗ると一時的に良くなることがあるため、湿疹と誤解されることがあります。
原因:乳管のがん細胞が乳首の皮膚に上がってくることで起こります。乳がん全体の約1〜4%を占め、50〜70歳に多く見られます。約8〜9割の方で同じ側の乳房の中にもがんがあり、約半数ではしこりが触れます。
重症度・緊急度:高いですが、数時間以内の緊急ではありません。数週間以内に検査を受けてください。治療と予後は、下にあるがんによって決まるためです。主な治療は乳腺外科医との手術で、乳首と乳輪だけを切除して放射線治療を行う場合と、乳房を切除する場合があります。塗り薬はこの病気の治療ではありません。
受診の目安:片側の乳首の発疹が2〜3週間で良くならない場合は、自己判断の塗り薬をやめて、生検とマンモグラフィ(mammography)のために受診してください。乳房のしこり、血の混じった乳首の分泌物、新しい乳首のへこみがある場合は、期間を待たずに受診してください。マンモグラフィが正常でも、この病気を除外することはできません。発疹が疑わしければ、生検の結果が決め手になります。
がんではない乳首のしこりやただれ:乳頭腺腫(nipple adenoma)
特徴:片側の乳首に、ただれ、かさぶた、または小さなしこりができ、かゆみや痛みがあり、分泌物や血がにじみます。見た目はパジェット病によく似ています。
原因:乳首の中の乳管にできる良性の腫瘍(erosive adenomatosis)で、まれです。多くは40〜50歳代で見つかります。
重症度・緊急度:がんではありませんが、肉眼ではパジェット病と区別できないため、必ず生検が必要です。治療は手術で取り除くことです。
受診の目安:片側の発疹はどのタイプでも同じで、2〜3週間を超えるとき、または乳首から出血があるときです。
乳房全体が赤く腫れ、皮膚がオレンジの皮のようになる
特徴:片側の乳房が赤く腫れて熱を持ち、数週間のうちに急にかゆみや重さが増します。皮膚が厚くなり、オレンジの皮のようなくぼみ(peau d'orange)ができます。多くは熱がなく、はっきりしたしこりもないことが多いです。
原因:授乳中の方では、感染による乳腺炎のほうがよく見られる原因です。しかし、がん細胞が皮膚のリンパ管をふさぐ炎症性乳がん(inflammatory breast cancer)も考える必要があり、乳がんの約1〜5%を占めます。
重症度・緊急度:高く、数日以内に検査を受けてください。
受診の目安:上のような特徴がある場合、または乳腺炎に対する抗生物質を7日間使っても良くならない場合です。その場合は、超音波検査、マンモグラフィ、皮膚生検が必要です。
男性の乳首のかゆみ
特徴:男性にも乳首と乳管があるため、これらの病気は起こりえます。よく見られるのは、ランニングシャツや粗い生地のTシャツによるかゆみやすりむけ、湿疹、胸の白癬、乳首まわりの毛包炎、そして乳輪の下が痛んだりかゆくなったりする男性の女性化乳房(gynecomastia)です。
原因:摩擦、汗、体重が多いこと、男性ホルモンに影響する薬など一部の薬、肝臓や甲状腺の病気です。男性の乳がんは乳がん全体の約1%で、高齢になってから見つかることが多いです。男性のパジェット病は非常にまれです。
重症度・緊急度:多くは危険ではありません。ただし、男性は乳房の病気になるとは思わないために受診が遅れがちで、乳房の組織が薄いため、病気が皮膚や筋肉の近くまで早く進むことがあります。
受診の目安:片側の発疹が2〜3週間を超える、乳首の下に硬くて痛みのないしこりがある、乳首がへこむ、または乳首から分泌物や血が出る場合は、待たずに受診してください。
湿疹、真菌、パジェット病の見分け方
この3つの病気は、初めは同じように赤くてかゆい発疹です。下の見分け方は考え始めるための目安で、診断の確定には検査が必要です。
場所:湿疹は乳輪から始まり、乳首の先端は避けることが多い · 真菌は乳輪のまわりか乳房の下に多い · パジェット病は乳首の先端から始まり、外へ広がります。
片側か両側か:湿疹は両側が多い · 真菌はどちらもありえる · パジェット病はほぼすべて片側です。
発疹の縁:湿疹は縁がはっきりしない · 白癬は縁が盛り上がってはっきりし、中央が薄い · カンジダは主な発疹のまわりに小さなブツブツが散らばる · パジェット病は縁が比較的はっきりして皮膚が厚くなります。
薬への反応:湿疹はステロイドで1〜2週間のうちにはっきり良くなる · 真菌は抗真菌薬で良くなる · パジェット病はどちらの塗り薬でも治らず、一時的に良くなることがあるだけです。
確定のための検査:湿疹は診察と問診 · 真菌は皮膚をこすり取って顕微鏡で調べる · パジェット病は生検です。
違う病気にステロイドや抗真菌薬を塗るとどうなる?
病気がわからないまま自宅で薬を塗ると、発疹の診断がさらに難しくなります。そのため、間違って使った場合の影響を先に知っておきましょう。
真菌にステロイドを塗る:最初はかゆみが減りますが、菌が増えます。発疹が広がり、縁も変わって元の形がわからなくなり(tinea incognito)、医師も菌を見つけにくくなります。
湿疹に抗真菌薬を塗る:発疹は良くならず、時間を無駄にし、薬の成分や基剤に再びかぶれる方もいます。
パジェット病にステロイドを塗る:発疹が一時的に薄くなり、治ったと思い込んでしまうことがあります。その結果、がんの診断が遅れます。
複数の成分が入ったクリームを塗る:ステロイド、抗真菌薬、抗生物質が一緒に入ったクリームは、病気の区別を難しくし、接触皮膚炎を起こす可能性も高めます。
薄い皮膚に強いステロイドを塗る:乳首や乳輪の皮膚は薄く、強い薬や長期間の使用で皮膚が薄くなり、毛細血管が浮き出て、皮膚のひび割れ(線条)が起こります。
どの病気かわからない場合や、決められた期間塗っても良くならない場合は、塗るのをやめて受診し、何を塗ったかを医師に伝えてください。塗り薬の一般的な選び方はかゆみ止めの塗り薬、正しい選び方をご覧ください。
原因別に医師が乳首のかゆみに使う薬
このリストは治療の考え方を理解していただくためのものです。薬の選択、量、期間は、診断された病気、妊娠、授乳の状況に応じて、診察した医師が決めます。
ワセリン(petrolatum):1日2回、そして運動の前に塗ります。必要に応じて続けて使えます。こすれや刺激の原因をやめると効果的です。
ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)1%クリーム:薄く1日1〜2回、自分で使う場合は7日までです。授乳中の方は授乳後に塗り、次の授乳の前に洗い流します。本当に炎症性の発疹であれば良い効果があります。7日たっても良くならなければ、診断を見直す必要があります。
中程度の強さのステロイド、例えばモメタゾン(mometasone)0.1%:医師が短期間処方し、多くは1日1回で1〜2週間です。厚い発疹や強い悪化に使います。効果は正しい診断と、指示どおりに減らしていくことにかかっています。この部位の皮膚は薄いためです。
タクロリムス(tacrolimus)0.03〜0.1%またはピメクロリムス(pimecrolimus)1%:ステロイドではない塗り薬で、1日2回、1週間から数週間使います。繰り返す発疹に向いています。効果は悪化させる要因を避けることにもかかっています。最初はヒリヒリすることがあります。授乳中の方は先に医師に相談し、赤ちゃんの口に薬が触れないようにしてください。
クロトリマゾール(clotrimazole)1%またはミコナゾール(miconazole)2%:1日2回、カンジダには2週間、白癬には2〜4週間使います。発疹の縁から2センチ外側まで塗り、発疹が治った後もさらに約1週間続けます。授乳中の方は授乳後に塗り、薬が残っていれば次の授乳の前に拭き取ります。かゆみが消えても決められた期間を続けることと、授乳中の場合は赤ちゃんも同時に治療することで効果が決まります。
テルビナフィン(terbinafine)1%クリーム:白癬には1日1〜2回、1〜2週間使います。広い範囲の発疹には、250ミリグラムの飲み薬を1日1回、2週間使います。妊娠中や授乳中の方には、一般に飲み薬は使いません。決められた期間を過ぎても良くならない場合は、菌の検査をもう一度行って確認する必要があります。
ナイスタチン(nystatin)液剤、赤ちゃんの口用:小児科医が指示した量を、母親の治療と同時に使います。白い苔が消えた後も、少なくとも48時間は続けます。母子の両方を治療し、搾乳器や哺乳瓶の乳首を毎日洗うと、効果が高まります。
フルコナゾール(fluconazole)飲み薬:診断がはっきりした後、乳首のカンジダが塗り薬で良くならない場合に医師が検討します。量と日数は人によって異なり、一緒に飲んでいる他の薬の確認も必要です。良くならない場合は、本当に真菌なのかを見直す必要があります。
ムピロシン(mupirocin)2%:浅い感染したキズに、1日3回、5〜10日間塗ります。広がっている場合は、医師がジクロキサシリン(dicloxacillin)やセファレキシン(cephalexin)などの飲み薬を約5〜7日間出すことがあります。効果は、原因となっているひび割れや発疹も一緒に治療することにかかっています。
ペルメトリン(permethrin)5%:首から下の全身に塗り、8〜14時間置いてから洗い流します。7日目にもう一度塗ります。同居の全員が同時に治療する必要があります。医師が、体重1キログラムあたり200マイクログラムのイベルメクチン(ivermectin)を、7〜14日あけて2回出すこともあります。治らない原因の多くは、全身にまんべんなく塗れていないか、同居の家族が同時に治療していないことです。
アシクロビル(acyclovir):初めてのヘルペスには、400ミリグラムの飲み薬を1日3回、7〜10日間使います。水ぶくれが出てから72時間以内に早く始めるほうが、効果が高くなります。
セチリジン(cetirizine)10ミリグラム:1日1回飲むと、かゆみをある程度和らげます。湿疹への効果はそれほど大きくなく、眠くなることがあります。妊娠中や授乳中の方は先に医師に確認してください。詳しくはかゆみ止め、抗アレルギー薬の飲み薬はどれが合う?をご覧ください。
このリストのどの薬にも共通するルールは、片側の発疹が2〜3週間で良くならない場合は、自己判断でそのまま塗り続けてはいけない、ということです。
乳首のかゆみで受診すると、何をする?
検査の多くは複雑ではなく、時間もかかりません。一般的な流れは次のとおりです。
問診:何週間前からか、片側か両側か、これまでに何を塗ったか、妊娠や授乳をしているか、アレルギーの既往、普段飲んでいる薬、家族の乳がんの既往を伺います。
皮膚の診察:乳首、乳輪、まわりの皮膚を見て、左右を比べます。医師はダーモスコピー(dermoscopy)を使うことがあり、体の他の部位にも同じ種類の発疹がないか調べます。
乳房とわきの下の触診:しこりやリンパ節の腫れを調べます。片側の発疹があるときには、通常行う診察です。
こすり取って顕微鏡検査(KOH):真菌が疑われるときに行います。痛みはなく、結果は数分から数十分でわかります。キズに膿がある場合は、菌を培養に出すことがあります。
パッチテスト(patch test):接触皮膚炎が疑われるときに行います。背中に検査用のパッチを貼り、約48時間後と96時間後に結果を読み取ります。
皮膚生検(skin biopsy):片側の発疹が良くならないとき、または見た目がパジェット病を疑わせるときに行います。医師は局所麻酔を注射し、直径約3〜4ミリの器具で皮膚を採取して1〜2針縫います。乳首では小さなくさび形に切除することもあります。時間はかかりません。病理の結果は多くは5〜10営業日で出ますが、特殊な染色が必要な場合はさらにかかることがあります。
乳房の画像検査:生検の結果がパジェット病だった場合やしこりがある場合は、マンモグラフィ、超音波検査、場合によってはMRIを行い、乳腺外科医に紹介して治療を計画します。
以前に薬を塗っていた方は、薬のチューブか、ラベルの写真を持参してください。また、薬で発疹が一時的に良くなった場合は医師に伝えてください。この情報は結果の解釈に影響します。検査でがんではなかった発疹でも、最後まで経過を見る必要があります。薬が効かなければ、医師は見直して追加の生検を行うことができます。
発疹が良くなるまでのセルフケア
なめらかな綿の下着を、サイズが合ったものでつけ、汗をかいたらすぐに着替えてください。
洗濯は無香料の洗剤を使い、発疹があるあいだは柔軟剤をやめてください。
乳首は水だけで洗い、こすらず、アルコールや刺激の強い石けんは避けてください。
入浴後は下着をつける前にそっと押さえて乾かし、母乳パッドが濡れたら交換してください。
かき傷を減らすため、爪を短く切ってください。
医師が変化を確認できるよう、発疹の写真を毎週撮っておいてください。
まとめ
乳首のかゆみの多くは、乾燥、摩擦、湿疹、接触皮膚炎、真菌が原因です。皮膚が正常なままかゆいだけであれば、がんを示していることはほとんどありません。
カンジダになった授乳中の方は、赤ちゃんの口と同時に治療する必要があり、多くの場合は授乳を続けられます。
男性も乳首の病気になります。男性の乳がんは全体の約1%です。
真菌にステロイドを塗ると発疹が広がり、湿疹に抗真菌薬を塗っても効かず、パジェット病にステロイドを塗ると診断が遅れます。
片側の乳首に赤み、皮むけ、浸出液があり、2〜3週間で良くならない場合は、自己判断の塗り薬をやめて、生検とマンモグラフィを受けてください。
乳房のしこり、乳首からの出血、新しい乳首のへこみがある場合は、期間を待たずに受診してください。
乳首のかゆみに関するよくある質問
胸のかゆみの原因は何ですか?
乳房や乳首のかゆみの多くは、ありふれた皮膚の病気が原因です。よくあるのは、乾燥、下着や運動用シャツとの摩擦、アトピー性皮膚炎、洗濯洗剤や香料による接触皮膚炎、乳房の下の真菌、妊娠中の皮膚の伸びです。皮膚がなめらかで正常なままかゆい場合は、柔らかい素材の衣類に替え、ワセリンを1日2回、1〜2週間ほど塗ってください。しかし、赤い発疹、皮むけ、浸出液、またはしこりがある場合は、医師の診察を受けてください。原因ごとに使う薬が大きく異なり、間違って使うと発疹が広がることがあるためです。
乳首が片側だけかゆくなる原因は何ですか?
数日前に始まったばかりの場合は、ホックや下着の縁による摩擦、赤ちゃんがよく吸う側の授乳によるキズ、または局所的な接触皮膚炎であることが多く、原因をやめれば良くなることがほとんどです。しかし、片側の乳首に赤み、皮むけ、かさぶた、浸出液が2〜3週間を超えて続く場合は、自己判断の塗り薬をやめて、医師の診察を受けてください。乳首のパジェット病と良性の乳頭腺腫を見分けるためです。どちらもまれで、肉眼では区別できません。局所麻酔で行う小さな生検が、はっきりした答えを出す方法です。
どんなかゆみはがんの可能性がありますか?
かゆみだけでがんを意味することはほとんどなく、慢性的なかゆみのある方の大半には別の原因があります。例えば、乾燥、湿疹、薬、腎臓の病気、肝臓の病気、甲状腺の病気です。検査を受けるべきなのは、ほかのサインを伴うかゆみです。片側の乳首の発疹が2〜3週間で良くならない、乳房のしこり、乳首からの出血、形が変わるほくろやただれ、あるいは発疹がないのに全身が6週間を超えてかゆく、体重減少、発熱、寝汗、白目の黄ばみがある場合です。血液検査と診察で、複雑な手順を踏まずに答えが出ることがよくあります。
悪性リンパ腫のかゆみはどんなものですか?
悪性リンパ腫のかゆみは、全身に出る慢性的なかゆみで、乳首だけに限りません。多くは、かき傷以外にはっきりした発疹がなく、夜に強くなります。ホジキンリンパ腫の患者さんの約10〜30%に見られます。医師がさらに調べるきっかけになるのは、首、わきの下、足のつけ根のリンパ節が、痛みなく腫れて引かないこと、長引く発熱、服がぬれるほどの寝汗、または6か月で10%を超える体重減少です。かゆみだけで、これらの症状がない場合は、ありふれた皮膚の病気であることがほとんどです。
妊娠中の乳首や乳房のかゆみは普通ですか?
妊娠中は、皮膚が伸びて乾燥しやすくなり、ホルモンが変化するため、乳首、乳房、お腹に軽いかゆみが出ることはよくあります。ワセリンを1日2回塗り、熱すぎないお湯で入浴し、サイズの合った綿の下着をつけると、楽になることが多いです。待たないでいただきたいのは、発疹がないのに手のひらや足の裏がとてもかゆい場合、特に夜に強い場合や、かゆみと一緒に白目の黄ばみや濃い色の尿がある場合です。胆汁うっ滞の可能性があり、血液検査のために24〜48時間以内に産科医へ伝える必要があります。また、塗り薬や飲み薬は使う前に医師に確認してください。
乳首のかゆみは自分で薬を塗ってもいいですか?塗っても治らないときはどうすればいいですか?
ワセリンはそのまま塗って構いません。傷のない両側のかゆい発疹であれば、1%のヒドロコルチゾンを薄く1日1〜2回、7日までなら使えることがあります。良くならない場合は塗るのをやめてください。その発疹は、真菌、ステロイドに反応しない病気、または薬へのかぶれの可能性があるためです。病気がわからないまま、複数の成分が入ったクリームを塗らないでください。受診すると、皮膚の診察を行い、真菌が疑われる場合は皮膚をこすり取って顕微鏡で調べ、片側の発疹が良くならない場合は生検を行います。どう治療するかをはっきりさせるためです。
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この記事は一般的な医学情報を提供するもので、医師の診察による診断に代わるものではありません。薬の選択と量は、診察した医師が決めます。
執筆:Patara Voravutinon 医師(皮膚科専門医)· 最終確認日 2026年11月4日


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